2024年8月アメリカで住宅売買の法改正 – 住宅ローンでの購入には新たな戦略が必要

Tumisu

Last Updated on 03-04-25 by Shinichi

1) 2024年8月に行われたアメリカでの法改正

法改正の概要

2024年8月、アメリカの住宅売買マーケットに大きな影響を与える法改正が実施されました。この改正の主要な目的は、不動産売買に関わる明確性と公平性を高めることです。詳細は以下の通りです:

  • 売り手は買い手のエージェントの報酬を払う必要がなくなった これまでは慣習的に売り手が売り手と買い手の両方のエージェントの報酬を負担していました。一般的に販売価格の5-6%がその報酬であり、売り手は得た売却代金の2.5-3%づつを双方の報酬に充てていました。しかし、改正後は、買い手側のエージェント報酬は買い手自身の財源で負担する必要があることが明記されました。これは買い手側に財政責任を分散させると同時に、売り手の財政負担を大幅に軽減させる目的があります。
  • エージェントの報酬明確化 これに関連し不動産エージェントの報酬(Commission)に関する契約書の締結が必須化されました。
  • 売り手の負担増加 売り手側による物件の情報提供や問題の解決の負担が増し、物件の負債を回避するためのシステムの強化が因素です。
  • 買い手の信用調査の厳格化 買い手のクレジットスコアに基づく評価がさらに詳細化され、催促ローンへの年収済の明確化や値倣に対する規制が強化されました。このため、値倣の確定において困難を感じる場合が増加しています。

2) 法改正後も売り手が買い手のエージェント報酬を支払うケース

この法改正でも最も重要なのは、買い手側のエージェント報酬を売り手が払う必要がなくなったと明記されたことです。しかし、現実問題として、買い手が支払えるのかという問題があります。初めて住宅購入するFirst time buyerが準備する頭金の平均は6-7%とされています。分かり安い例で3%の頭金が$2,5000のケースで考えます。何とか$2,5000を準備した購入者が、エージェント報酬にほぼ同額を準備するのは難しいことです。住宅は高額です。2.5-3%といえど、大金です。住宅ローンにエージェント報酬を加えることもでこともできません。3%の頭金で3%の報酬とすると銀行は物件価格の100%を貸し出すことになり、通常銀行はそのようなことはしません。つまり、大きな頭金を準備出来ない購入者には、自分のエージェント報酬を払いたくても払えないのです。このような状況で買い手が負担しないなら、売らないとすると、売買そのものが成立せず、売り手としても買い手としても本末転倒です。結果として、法律上は売り手は負担する必要はないと明記されても、実質的には、売り手がこれまで通り負担しなければない現状があります。とりわけ、多くのFirst time buyerのような大きな頭金を準備できない人が希望する小規模物件では、売り手が今後も払う状況が続くと思われます。
関連記事: Why Sellers Should Continue Paying Buyers Agent’s Commission in 2024

3) 購入者が直面する問題

この法改正は、多くのFirst time buyerのように大きな頭金を準備できない購入者にとって、不利に働く可能性があります。このような購入者は、売り手に自分のエージェント報酬を負担してもらうよう交渉する必要が出てきます。

しかし、以下の状況で課題が浮き彫りになります:

  • 競争の激化 オファー価格が同等の他の購入希望者が「私は自分のエージェント報酬を自分で払います」と申し出た場合、エージェント報酬を売り手に負担させようとする購入者は競争で不利になります。
  • 売り手の拒否 法律でエージェント報酬を支払う義務がなくなったため、「買い手のエージェント報酬を負担したくない」とする売り手が増える可能性があります。

その結果、大きな頭金を準備できない購入者は、住宅購入プロセスにおいて不利な立場に立たされることが多くなり、住宅取得が一層難しくなるケースが生じています。

4) 住宅ローンでの購入に必要な新たな戦略

この法改正を踏まえ、実際に私が採用し成功した対策をご紹介します。

それは、自分のエージェントを付けずに物件を探し、オファーを出す際に売り手のエージェントに自分(買い手)のエージェントを兼任してもらうよう交渉することです。この方法では、売り手のエージェントが売り手と買い手の両方から報酬を得るため、売り手に対してエージェント報酬の減額を提案できる余地が生まれます。例えば、「この買い手のオファーを受ける場合、報酬を4%に設定します。」のように。

この結果:

  • エージェント の報酬は通常の2.5%から4%に増加し、
  • 売り手 の支払額は通常の5%から4%に減少します。

この方法は、「私は自分のエージェント報酬を自分で払います」と申し出る競争相手には勝てませんが、「私(買い手)のエージェント報酬を負担してください」と交渉する相手に対しては優位に立てます。

実際、私がこの法改正後に購入した物件でも、私より高額のオファーを出した競争相手がいました。しかし、この戦略を活用することで、私のオファーが売り手に受け入れられました。この方法は、特に資金面で制約のある購入者にとって、有効な戦術となるでしょう。

5) 2024年8月のアメリカで住宅売買の法改正 と新たな戦略まとめ

2024年8月に実施されたアメリカの住宅売買における法改正は、売り手と買い手の役割や負担を明確化し、公平性を高めることを目的としています。しかし、この改正は特に初めて住宅を購入する人や資金的な制約のある買い手にとって、新たな課題を生み出しました。

買い手がエージェント報酬を負担する必要が明記されたことで、頭金や諸費用以外に追加の支出を考慮する必要があり、競争環境が厳しくなる一因となっています。その一方で、売り手の負担軽減や市場全体の透明性向上といった効果も見られます。

本記事では、購入者が直面する課題と、それに対応する具体的な戦略を解説しました。特に、売り手のエージェントを買い手側としても兼任してもらう方法は、実践的かつ有効な戦術と言えるでしょう。

この新しい状況を理解し、自身の資金計画や交渉力を駆使することで、購入者としての競争力を高めることができます。法改正の影響を乗り越え、成功する住宅購入を目指しましょう。

更新日: 12/29/2024

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