アメリカの住宅ローンの仕組み(変動と固定金利)を分かり安く解説。


アメリカの住宅ローンー変動・固定金利

アメリカで住宅を購入する際、多くの人が住宅ローンを利用します。この住宅ローンには、日本と同じように変動金利(Adjustable Rate Mortgage: ARM)と固定金利(Fixed Rate Mortgage)の2種類があります。固定金利の方は日本の住宅ローンの固定金利と全く同じです。変更金利も基本的には日本の変動金利と同じです。変動金利(Adjustable Rate Mortgage: ARM)は、基本的には日本の変動金利と似ています。最初の一定期間(通常3年、5年、または7年)は金利が固定され、その後は毎年金利が見直されます。さらに、近年の金利動向とその背景についても触れます。これまでは、それぞれの仕組みやメリット・デメリットを理解することは、住宅ローン選択の重要なポイントでしたが、現在のアメリカでは異常な事態が起きており、変動か固定かを選ぶ必要はなくっています。固定金利の一択です。変動の金利が高いからです。

住宅ローンは英語で?

住宅ローンは他のローンとは異なりMortgageと言います。住宅ローンを意味する”Mortgage”という言葉は、中世フランス語の”mort gage”(モール・ガージュ)に由来します。この言葉を直訳すると”死の誓約”という意味になります。なぜこのような名前がついたのかというと、ローンの返済が終わるまで借り手は担保となる財産(通常は家)を完全に自分のものにできない、という考え方に基づいています。また、”mort”(死)は、契約が終了すること、つまり借金を返済し終わるか、それができなかった場合に財産が差し押さえられることで契約が”死ぬ”という状況を表しているとされています。gageはゲームに関連する言葉でMortgageは”死のゲーム”とも意訳できます。現在の信用創造による貨幣経済は”椅子取りゲーム”に例えられます。Mortgageは一定の割合で返済不可能になる人が必ず出てくるシステムなので、まさに”死のゲーム”な訳です。普通に使われている言葉の裏に実は怖い歴史や事実が隠れている例の一つです。

固定金利住宅ローン

固定金利住宅ローンは、契約時に決められた金利がローン期間中ずっと変わらないタイプのローンです。一般的な期間は15年、20年、30年といった長期間で設定されます。

メリット:
  • 予測可能な支払い額:月々の返済額が一定であるため、家計の計画を立てやすい。
  • 経済の影響を受けにくい:市場金利が上昇しても影響を受けない。
デメリット:
  • 初期金利が高い:変動金利と比べて初期金利が高い傾向にある。
  • 柔軟性の欠如:市場金利が下がった場合でも、契約時の金利が適用され続ける。この欠点は後述のリファイナンスで解消されます。

変動金利住宅ローン

変動金利住宅ローンは、一定期間ごとに金利が見直されるタイプのローンです。最初の数年間(一般的に5年、7年、10年)は固定金利が適用され、その後市場金利に基づいて金利が変動します。

例えば、5/1 ARM(5-Year Adjustable Rate Mortgage)の場合、最初の5年間は固定金利が適用され、それ以降は毎年金利が見直されます。この期間の後、金利は市場金利や契約条件に基づいて調整されるため、将来的な返済額が変動します。その他の例として、7/1 ARMや10/1 ARMもあり、数字は固定金利期間を示しています。

メリット:
  • 初期金利が低い:固定金利よりも低い金利から始まるため、初期費用を抑えやすいとされてきましたが、近年ではこのルールが必ずしも適用されていません。例えば、5/1 ARM(Adjustable Rate Mortgage)のような短期固定期間の変動金利ローンは、むしろ固定金利ローンよりも高い金利で始まるケースが増えています。
  • 市場金利低下の恩恵:市場金利が下がると、ローン金利も下がる可能性がある。
デメリット:
  • 不確実性:金利が上昇すると、月々の返済額が増加するリスクがある。
  • 長期的な計画の難しさ:返済額が変動するため、将来の家計予測が難しくなる。

変動金利の一番のメリットは初期金利が低いことですが、このルールが近年では全く適用されていません。その理由として、インフレ抑制を目的としたFRB(連邦準備制度理事会)の急激な利上げが挙げられます。この政策により、短期的な金利が上昇し、短期固定期間を持つ5/1 ARMなどの変動金利ローンが、むしろ長期固定金利ローンよりも高い金利で始まるという現象が起きています。

さらに、インフレに対する不確実性が投資家心理に影響を与え、短期金利の上昇を一層加速させています。その結果、2024-2025年現在のアメリカでは、変動金利を選ぶ理由がほとんどなく、固定金利が優勢な選択肢となっています。これにより、住宅ローン市場全体における固定金利ローンの割合が増加しています。変動か固定かを選ぶ必要は全くありません。固定金利の一択です。固定金利の方が変動よりも金利が低い上に将来の金利上昇のリスクもありません。

アメリカの住宅ローン金利が決められる仕組み

アメリカの住宅ローン金利は、主に以下の要因によって決まります。

  1. 市場金利の動向: アメリカでは住宅ローン金利が市場金利、特に10年物国債の利回りに密接に連動しています。市場金利は、経済状況やインフレ率、連邦準備制度理事会(FRB)の政策金利の動きによって変化します。
  2. FRBの金融政策: FRBが設定する政策金利(フェデラルファンド金利)は、短期的な金利の指標となります。この政策金利の上下が住宅ローンの変動金利部分や短期ローン金利に直接影響を及ぼします。
  3. 信用リスク: 借り手の信用スコアや財務状況によっても金利が変わります。信用スコアが高いほど低金利で融資を受けられる可能性が高まります。
  4. ローンの種類と期間: 固定金利ローンや変動金利ローン、さらにローンの期間(15年、30年など)によって金利は異なります。長期間の固定金利ローンでは、リスクプレミアムが含まれるため、通常は短期間のローンよりも高い金利が適用されます。
  5. 経済の需給バランス: 住宅ローン市場の需給バランスも金利に影響を与えます。例えば、住宅ローン需要が高まると金利が上昇し、需要が減ると金利が下がる傾向があります。

このように、住宅ローン金利は複数の要因によって動的に決定されるため、借り手は市場動向や自身の信用状況を把握して最適なタイミングでローンを組むことが重要です。

2024-2025年の異常事態

本来、FRBが政策金利を下げれば、預金金利とローン金利の両方が下がるはずです。しかし、近年ではいくつかの要因が重なり異常事態が発生しています。具体的には、インフレ率の高止まりとそれに対する市場の懸念が住宅ローン金利に反映されています。FRBが政策金利を下げると予測された中でも、投資家たちはインフレリスクや長期債の需要低下を織り込んで金利を引き上げました。その結果、預金金利は確かに下がっているものの、住宅ローン金利はむしろ上昇しているという現象が起きています。

アメリカの住宅ローンの特有の仕組み

アメリカの住宅ローンには、日本と異なる特徴や制度があります。

  1. リファイナンス(Refinance)
    • 住宅ローンの借り換えをすることで、金利や条件を変更可能。
    • 金利が下がったタイミングで固定金利ローンをリファイナンスするのが一般的。
      リファイナンスは日本でも可能ですが、アメリカの方がもっと気軽に手軽に行えます。日本で借り変えと言うと借入銀行ごと変更するイメージでしょうが、アメリカで全く同じ銀行を使ってリファイナンス可能です。銀行の方から、金利が下がったのでリファイナンスしませんか?と打診があったりします。
  2. 初期料金を支払って金利を下げる
    • アメリカの住宅ローンには、「ポイント」(Points) と呼ばれる仕組みがあり、これは金利を引き下げるために初期費用として支払うオプションのことを指します。いくらか支払えば金利を下げることが出来ます。この仕組みは、日本ではあまり見られない特徴です。
    • ポイントの定義:1ポイントは、借入金額の1%に相当します。
    • ポイントを購入する目的:ポイントを購入することで、ローンの金利を一定の割合だけ引き下げることができます。一般的に、1ポイント購入すると、金利が約0.25%程度下がると言われています。ただし、この割合は銀行やローン商品によって異なります。ポイントを支払うことで金利が下がり、結果的に毎月の返済額を減らせるだけでなく、ローン全体で支払う利息の総額を削減できます。
    • 支払うポイントと毎月の返済の減額分を比較検討しましょう。短い期間内(1年とか2年とか)にリファイナンスなど、ローンを組み直すなら、支払うポイントが返済減額分よりも多くなってしまうことがあります。
  3. 税制優遇
    • 住宅ローンの利息が所得税控除の対象となる。
    • この制度により、ローンを利用することが経済的に有利になるケースがありました。しかし、トランプ大統領の政策により基礎控除額が大幅に引き上げられた結果、以前よりも住宅ローン利息控除のメリットを享受できる人が減少しました。具体的には、標準控除が多くの家庭にとってより有利になったため、「家を買えば税制のメリットが大きくなる」という従来のルールが必ずしも適用されなくなっています。一方で、この政策はより多くの人に公平な税制上の恩恵を与えることを目的としており、家を購入しない場合でも一定のメリットを享受できる仕組みになっています。私自身は、自宅購入時にこの政策の影響を受けてその特別なメリットは逃しました(正確には家を購入しようがしまいが同様のメリットを得られるようになった)が、より多くの人が一日も早く自宅購入によって経済的な安定を得られることが重要だと考えています。そのため、トランプ大統領のこの政策には一定の支持をしています。
  4. 何歳からでもローンを組める
    • アメリカの住宅ローンでは、年齢制限が日本と比べて非常に緩やかで、原則として何歳からでも30年ローンを組むことが可能です。この点は、日本の住宅ローン制度とは大きく異なる特徴の一つです。日本では、年齢制限によってローンの返済期間が制限されたり、高齢者がローンを利用することが難しくなることが一般的です。一方、アメリカでは借り手の年齢よりも、収入や信用スコアが重視されるため、高齢者でも長期ローンを利用できます。貸出銀行にとっては、家そのものを担保に取ることでリスクを軽減できる仕組みが整っています。さらに、アメリカでは住宅価格が長期的に上昇し続けていることが多く、万が一返済が困難になった場合でも、担保としての住宅の価値がバックアップとなるため、銀行側が安心して貸し出しを行える背景もあります。この柔軟な制度により、高齢者も含めて多くの人がマイホームの夢を実現できる環境が整っているのがアメリカの住宅ローン市場の特徴です。

返済方法

アメリカと日本の住宅ローン返済方式には大きな違いがあります。

日本では、元利均等返済方式元金均等返済方式のどちらかを選択することができます。元金均等返済方式では、毎月一定額の元金を返済し、その分利息が減少していく仕組みです。初期段階では返済額が多くなりますが、時間が経つにつれて月々の支払い額が減少するため、総返済額を抑えることができるメリットがあります。一方、アメリカでは元利均等返済方式が一般的です。この方式では、元金と利息を含む毎月の返済額が一定となるように設計されています。返済初期の段階では利息部分が大半を占め、元金部分が少なくなりますが、時間が経つにつれて元金の割合が増加し、利息部分が減少していきます。

アメリカで元利均等返済方式が主流である背景には、家を購入する際の経済的ハードルの高さがあります。初期の支払い額が大きくなる元金均等返済方式は、月々の負担が重いため、多くの人にとって現実的ではないと考えられています。このように、両国の返済方式には文化的・経済的な違いが反映されています。

在住者(きっとアメリカ人も)の基本戦略

アメリカはインフレ率が日本よりも高く、賃貸料が毎年大きく上昇するため、自宅を購入して賃貸から抜け出すことが経済的なメリットとなります。賃貸に住み続けるよりも、住宅購入によって長期的なコストを抑える方が有利とされています。

住宅購入のタイミングは、最終的には個々の人生設計と経済状況によって決まります。理想的にはローン金利が低い時期に購入するのが良いのは明らかですが、金利がいつ下がるのかを正確に予測するのは困難です。

そのため、基本戦略としては、金利の高低にかかわらず、購入が可能であれば、できるだけ早く自宅を購入することが推奨されます。そして、将来的に金利が下がった場合には、リファイナンス(借り換え)を行うことでローンの条件を改善することができます。

私自身も(きっと多くのアメリカ人も)、購入可能になればすぐに自宅を購入し、後に金利が下がればリファイナンスを行う方針です。金利が下がらなければそのまま。この戦略は、賃貸に住み続けるリスクを回避し、将来の経済的安定を確保する方法として広く支持されています。
アメリカで住宅購入の大切さ:日本との違い

アメリカ住宅ローン-変動・固定金利 まとめ

現在のアメリカにおける住宅ローン市場は、異常な金利状況が続いています。この状況は、FRBの金融政策や市場金利の変動、さらにはインフレの影響によって引き起こされています。これらの要因が住宅ローン金利の決定に強く影響を及ぼし、特に短期金利が大幅に上昇する中で、固定金利ローンが唯一の合理的な選択肢として注目されています。

変動金利ローン(例: 5/1 ARM)は、かつては初期金利の低さが魅力でしたが、現在では固定金利ローンを上回る金利で提供されるケースが多く、リスクも高いためその利点を失いつつあります。一方、固定金利ローンは将来の金利上昇リスクを回避し、返済計画の安定性を提供するため、多くの借り手に支持されています。

さらに、アメリカの住宅ローンは、元利均等返済方式が主流です。この方式では、月々の支払い額が一定であるため家計管理がしやすいものの、総返済額は元金均等返済方式よりも多くなる傾向があります。

将来の金利動向が安定し、変動金利ローンが再び有利になる可能性もあります。その場合には、市場環境を注視し、適切なタイミングでリファイナンスを行うことで、より良い条件を追求することが賢明です。

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更新日: 12/29/2024