アメリカで住宅ローン申請法/手順、流れ、必要書類、注意点/購入予定の2年前から注意が必要


アメリカで住宅を購入する際、多くの人が利用するのが住宅ローンです。しかし、日本の住宅ローン制度とは異なる点が多いため、初めての申請では戸惑うこともあるでしょう。私はこのプロセスをこれまで2回行いました。アメリカで住宅ローンを申請する際の具体的な手順や必要書類、注意すべきポイントを詳しく解説します。とりわけ、重要なのは、過去2年分の書類を要求されることです。購入予定の2年前から注意すべきことがあります。

アメリカ住宅ローン申請の流れ

住宅ローンを申請するには、以下の流れを辿るのが一般的です:

  1. 銀行選びと比較サイトの活用
    住宅ローンの申請を始める前には、複数の銀行や金融機関を比較することが重要です。ZillowBankrateといった比較サイトを活用することで、金利や条件を効率的に確認することができます。この情報を基に、自分に最適なローン提供者を選択し、その後、選択肢を絞り込んで各銀行で事前承認(Pre-approval)の手続きを進めるのが良いでしょう。比較サイトや個別銀行のサイトに情報を入力するとメールや電話での問い合わせが沢山来ます。そういうものだと覚悟して下さい。そして、混乱しないように注意しましょう。
  2. 事前承認(Pre-approval)の取得
    物件探しを行う前に、最大事前承認を取得し、予算内での住宅探しをします。ローン会社に申請者の収入、資産、負債情報を提供し、仮の融資限度額を提示してもらいます。
  3. 住宅選びと売買契約の締結
    購入したい住宅へのオファーが売主から受け入れられたら、売買契約を締結します。この際に頭金の一部を支払います。
  4. ローン本申請
    売買契約を基に正式なローン申請を行います。必要書類をすべて提出し、審査が開始されます。物件ごとに固定資産税や保険料が異なるため、物件特有の条件を考慮して進めます。
  5. 査定(Appraisal)
    ローン会社が住宅の市場価値を査定し、購入価格が適正であるか確認します。購入価格が市場価値を大きく上回る場合、現行としては担保が取れなくなるので、融資されないことがあります。この場合は、売主と交渉することになります。
  6. 審査完了(Underwriting)
    審査担当者が提出された情報を精査し、融資の最終承認を行います。
  7. クロージング(Closing)
    必要書類に署名し、住宅の所有権が正式に移転されます。
    ローンの初回支払い日もこの時点で確定します。

アメリカ住宅ローン申請必要書類

住宅ローン申請時に提出が求められる書類には以下のようなものがあります:

  • 身分証明書(パスポートや運転免許証)
  • 過去2年分の納税申告書(Tax Returns)
  • 最近の給与明細(Pay Stubs)
  • 銀行口座の残高証明(Bank Statements)
  • 雇用証明書(Employment Verification Letter)
  • その他の収入を示す書類(賃貸収入や投資利益など)日本に不動産やビジネスなどを所有している場合には、この関連書類が要求されます。

DTI

DTI(Debt-to-Income Ratio) は、住宅ローン審査で重要な指標の一つです。これは申請者の月収に対する月々の借金返済額の割合を示します。

  • 計算式:DTI(Debt-to-Income Ratio)は以下の式で計算されます。
    DTI = ローン返済額 ÷ 収入

この計算式を用いることで、申請者の収入に対する負債の割合を明確にすることができます。- 一般的に、DTIが43%以下であることが望ましいとされています。DTIが高い場合、ローンの審査が難しくなることがあります。

Underwriter

Underwriter(審査担当者) は、ローン審査の最終段階で重要な役割を果たします。最初にローンの相談を受け、Pre-approvalを手伝った、窓口(営業)の人を介して、借主とUnderwriterがやりとりをする形になります。

  • 申請者が提出した情報や書類を精査し、ローン返済能力を評価します。
  • 審査の結果、ローンの承認・条件付き承認・却下が決定されます。

金利の決まり方

住宅ローンの金利は、主に以下の要因によって決まります:

  • クレジットスコア(Credit Score)
    • 高いクレジットスコアは、低金利のローンを得る鍵です。
    • スコアが700以上だと有利な条件が提示されることが多いです。
  • 市場金利
    • ローン金利は、連邦準備制度(FRB)が設定する基準金利や経済状況によって影響を受けます。
  • ローン期間
    • 一般的に、短期ローンは低金利、長期ローンは高金利となります。

ポイントを支払って金利を下げる

アメリカには、金利を下げるために「ポイント(Points)」と呼ばれる仕組みがあります。

  • 1ポイントは、借入金額の1%に相当します。
  • ポイントを購入すると、金利が引き下げられ、総返済額を減らせます。
  • 初期費用は増えますが、長期的に節約できるため、長く住む予定がある場合に有効です。

注意点~二年間の注意が必要~

住宅ローンをスムーズに進めるためには、以下の点に注意が必要です:

  • 信用履歴を整える
    数年間の信用履歴(クレジットヒストリー)が重要です。ローン申請前に信用スコアを改善しておくと有利です。
  • 必要書類の準備
    全ての必要書類を事前に準備し、不備がないか確認することが大切です。日本の書類は英語に訳す必要があります。
  • 余裕を持った計画
    ローン審査やクロージングには時間がかかるため、余裕を持ったスケジュールを立てましょう。
  • 日本からの書類
    日本からの書類が必要になる場合、手続きが非常に複雑になることがあります。特に、日本に不動産やビジネスを所有している場合、その収益や負債額、税金関連の書類が求められることがあり、準備に手間がかかることが一般的です。また、アメリカで一般的な書類形式が日本では存在しないこともあり、これがさらなる課題となります。ただし、これらの情報がアメリカでの過去2年分の納税申告書(Tax Returns)に記載されていない限り、アメリカの銀行から追加で確認されることは少ないでしょう。したがって、住宅ローン申請を見据えて2年前から計画的に準備を進めることが重要です。必要な情報を適切に整理し、納税申告書に記載するかどうかを慎重に検討することをお勧めします。
  • ビジネスオーナーや個人事業主の注意点
    事業主や個人事業主の場合、税金を抑えるために経費を最大限計上することで手元に残る現金を増やす戦略を取ることが多いですが、この方法が住宅ローン申請時には課題となる場合があります。見かけ上の収入が低いと見なされ、ローンの融資額が大幅に制限される可能性があるためです。サラリーマンと異なり、事業主の会計ルールは銀行側に正確に理解されない場合があり、場合によっては審査において不利に働くことがあります。そのため、住宅購入予定の少なくとも2年前から、経費の計上を抑え、見かけ上の収入を増やしておくことが有効な戦略となるでしょう。また、一部の銀行では事業主の特殊な事情を考慮し、経費をローン審査において除外して計算する柔軟なルールを採用している場合もあります。具体的な例として、事業収益の全体像や、経費の割合が高い業種に特化した審査基準を持つ銀行が挙げられます。こうした選択肢を検討することで、事業主としての状況に適したローン条件を見つけることが可能です。

アメリカでの住宅ローン申請手順のまとめ

アメリカで住宅ローンを申請する際には、日本とは異なる独自の手続きや考慮すべき制度が数多く存在します。例えば、クレジットスコアやDTI(Debt-to-Income Ratio)、そして金利を抑えるためのポイント制度など、事前に理解しておくべき要素が多岐にわたります。また、必要書類の準備や、事業主が直面する特有の課題に対しても計画的な対応が求められます。特に日本からの書類が関わる場合や、ビジネスオーナーとして収入をどのように示すかなど、細部にわたる注意が必要です。とりわけ、前もって知っておかねばならないことは、2年前からの準備が必要であることです。

更新日: 12/24/2024